========================================食品工場長の仕事とは===

    賞味期限の設定について


読者の方から質問を頂きました。メルマガの原動力ですのでどんなことでも質

問をお願いします。

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初めましていつも勉強させてもらっています。

私は食品関係の品質管理をしております。

賞味期限設定に関して「安全率」とよく耳にします。

例:150日を賞味期限限界率とし安全率80%である120日を賞味期限とした。

 

安全率の係数とはどのように算出すればいいのでしょうか?

上記の例で例えると20%は危険率になるのですか?

具体的な算出例を挙げてもらえれば有り難いのですが。

宜しくお願いします。

商品は漬物関係です。

理化学試験と官能検査の虐待試験を行っており

理化学試験では大きな変化はないので、官能評価で賞味期限設定しています。

現在の設定方法は賞味期限限界値の前回の官能検査日までの期間をもって

設定しています。

宜しくお願いします。

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賞味期限は製造工場が五感で設定します。

 初めに賞味期限設定の考え方をお話しします。賞味期限の期間の設定は、製

造工場で、決めることです。法律で設定の仕方を解説はしていますが、基本は製

造工場、会社の考え方で賞味期限を設定します。その期間、おいしく食べられる

事が最低の条件です。よく勘違いするのが、細菌検査をして一般生菌数が300個

/g以下だったから大丈夫ですと答える方がいますが、私たちが製造しているのは、

食品ですから、細菌的に腐っていないから大丈夫です、というのはちょっと違うよう

な気がします。まず、五感で検査する必要があります。視覚(みること)、嗅覚(に

おいをかぐこと)、触覚(触れてみること)、聴覚(音を聞いてみること)、味覚(味を

見てみること)になります。この五感の代用特性として細菌検査(一般生菌数、大

腸菌、サルモネラ等々)、理化学検査(水分値、蛋白値、ph値等々)、官能検査(五

感の変化すなわち、食べて見ること、レオロジーの検査(破断値、ひっぱり強度、食

品の物性強度等)になります。この代用特性というのは、本来人間の五感に頼って

食べられるかどうかを、検査した方がいいのですが、人間は、その日によって体調

が違いますので、ある程度機械に、その人間が持っている五感を計測させて、代用

特性とします。

 

 

賞味期間を左右するファクターを見つけます。

 例えば、卵の賞味期限はどう設定したらいいのでしょうか?その卵の日持ちを左

右する、ファクターは何が有るか考えてみます。y=ax+bx+cx+・・・・・・・・・・とい

うように、yは賞味期間、すなわち日数です。aは要因、bも要因というように、日数を

伸ばす要因がいろいろ積み重なって賞味期間は伸びて行きます。卵の賞味期限を

左右する、ファクターとしては次の物が考えられます。a鶏種、b餌の種類、c鶏舎の

環境、d集卵方法、e集卵から洗浄までの保管方法、f洗浄方法、g洗浄からパックま

での保管方法、hパック時の殺菌方法、iパックの方法、jパック後の保管方法、k配送

方法、l販売時の保管方法。この要因によって、yの賞味期間がのびます。このファク

ターの中で、卵の場合賞味期間を、のばす一番大きな要因は温度です。採卵してか

らいかに、早く冷やすかと、言うことになります。生まれてからすぐ採卵して、すぐ冷や

すのがポイントになります。

 

安全率を設定します。

 ここで読者の方からの質問である安全率の考え方がでます。食品は工場で造ります

ので、商品によってバラツキがでます。そのバラツキのある商品の中の一つを取って、

賞味期限を設定すると、バラツキの中で賞味期限内に商品に異常がでる場合がありま

す。そのバラツキの中でどのようなテストを繰り返すかが、その工場、その会社の安心

感に繋がります。10℃保管の条件の表示で有る商品を15℃で保存テストを行いその

数値をもって賞味期限を設定すると、温度で5℃の安全率がありますから、問題なく期

間を設定することが出来ます。但し、通常は10℃の保管の商品は10℃で保存テストを

行いますから、10℃の保存テストの結果をもって賞味期間を設定します。この場合私の

経験上はテストで10日の賞味期限の設定の結果が出た場合は安全率0.7をかけて7

日に設定します。読者の方の0.8では商品によってばらつく場合があります。

 

 

保管テストを繰り返します。

 バラツキが小さい商品で安全率を0.8にすることが出来れば賞味期限は延びることに

なります。市場で長く販売することが出来れば、商品のためにもいいので、バラツキを小さ

くすることが、工場の実力を上げることになります。その安全性を上げるためには、保管テ

ストを繰り返します。毎日全ての商品で無くても、賞味期限設定期間の保管テスト、商品が

食べられなくなるまでの保管テスト、この両方を繰り返します。賞味期限内では問題が無く、

食べられなくなるまでのテストを繰り返して、その期限が延びれば賞味期限を延ばすことが

出来ます。この場合に外気温の影響を受ける商品がありますので、季節によって賞味期

限を変更している商品もあります。

 

私のお話が皆さんの工場管理を、耕し続けるヒントになれば幸いです。

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