========================================食品工場長の仕事とは===
『トヨタ生産方式は食品業界に通用するのか?』
読者の方から私のhpを見てご意見を頂きました。特に最後のリストラの所は
経営者の方に是非読んで頂きたいと思います。hp、メルマガの元気の基に
なりますので是非ご意見お願いします。
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「トヨタ式生産方式について」
http://homepage3.nifty.com/ja8mrx/toyota8.htm
「トヨタ式生産方式について 続報」
http://homepage3.nifty.com/ja8mrx/toyota7.htm
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トヨタ生産方式についての皆様のご意見を興味深く拝見いたしました。
トヨタ生産方式についての理解には、迷走されている部分もあったようですが、
まず、質問された方の最大の関心は、『トヨタ生産方式は食品業界に通用する
のか?』ということではないでしょうか。
食品業界とは無縁の私が断言するのもおかしいと思われるかもしれませんが、
結論から先に言わしていただくと、間違いなく通用します。
ただし、いきなりトヨタ生産方式の具体的な展開方法等について書いたところで、
余計な混乱を招くだけですので、以下、トヨタ生産方式の基本の基本について、
私の知っている範囲で述べさせていただきます。
そもそも、トヨタが今日のトヨタ生産方式といわれる仕組みに取り組み始めた
きっかけは、終戦当時、日本の自動車メーカーに対し、10倍近い生産性の差を
つけていた米国の自動車産業に追いつき追い越すための努力の積み重ねで
あったことは言うまでも ありませんが、同時に、市場というのは無限ではなく、
品物の売れる量には限りがあるという概念から、計画的な量産によって原価を
安くするアメリカ型の大量生産方式を 真似ていたのでは危険であるということを
念頭に、少量で安く造ることが出来れば、 世界に通用するモノ造りができるという
思想を根底に成り立っているのであり、そうした先人の知恵が、不況に強いと
いわれるトヨタ生産方式たる所以であるといえます。
「トヨタ生産方式は自動車業界だから出来ることであって、異業種には根付かない」、
「コンサルタントがいる間は効果が出るが、いなくなったら元に戻ってしまう」という
意見を耳にすることもありますが、自動車業界であろうと電機業界であろうと
「モノを造る」という行為にとって、造られたモノの『鮮度』が重要であるという点では
食品業界となんら変わりないはずです。
トヨタ生産方式について考える上で、最も重要なことは、「トヨタの経営の仕組み
(モノの造り方)」と「従来の会社の仕組み(モノの造り方)」とは全く異質なもので
あるということです。そういう意味では、世の中で広く言われているところのトヨタ
生産方式とは、トヨタの経営の仕組みに変わったトヨタが展開している手法(モノの
造り方) そのものを指すことが多く、「従来の会社の仕組み(モノの造り方)」から
「トヨタの経営の仕組み(モノの造り方) 」に変えるにはどうしたらよいか、ということ
についてはあまり 明確にされていないといえます。
つまり、前述のような「トヨタ生産方式は自動車業界だから出来ること」とか「コン
サルタントがいる間しか効果が出ない」というような否定的な意見の背景には、
トヨタ 生産方式を導入した(つもりの)企業のほとんどが、「従来の会社の仕組み
(モノの造り方) 」を変えないまま、いわゆる「かんばん」や「一個流し」「ジャスト・
イン・タイム」等のトヨタ生産方式の手法だけを真似しているに過ぎず、たとえ効果が
出たとしても長続きせずに壊れてしまうとことが多いのです。そして、そのような
企業のほとんどは、トヨタ生産方式の導入について、徹底的に「ムダを取る」ことで
「生産性の向上」や「在庫削減」、「コストダウン」に結びつくという概念を強く抱いて
います。
つまり、「生産性の向上」や「在庫削減」、「コストダウン」というものがトヨタ生産
方式を展開するうえでの目的となってしまっているのです。
そもそも、トヨタ生産方式とは分かりやすいものです。より良いモノ造りを追求して
いくと自然とそこにたどり着きます。単にその目的は、合理的にモノを造ることで
あって、「生産性が上がる」「モノが減る」「コストが減る」というのは目的ではなく、
あくまでも結果なのです。
したがって、従来の仕組みを変えないまま、ライン改善や1秒・2秒、1歩・2歩という
ような動作改善等の「ムダを取る」ことが全ての目標となってしまうと、作業者の
役割は単に受動的なものでしかなく、「きつい」とか「労働強化的」なイメージを与えて
しまう割には、そういった現場レベルでの部分的な改善は、会社全体の経営収支で
見た場合、それ程の効果は上がりません。
それに対し、作業者にとって、楽なモノの造り方になるように、会社全体の仕組み
そのものを変えてしまう過程でムダが取れて行くというのでは、その役割や展開方法、
経営に与える効果は全く違ってきます。
つまり、比較の対象を工場の中のラインや設備、製品といった視点で見れば、トヨタ
とは異業種だからという意見が出てくるのは当然のことといえます。しかし、トヨタ生産
方式の導入の基本は、手法の展開ではなく会社全体の「ヒト」と「モノ」の「流れ」の構築です。
「モノを造る」という行為にとって、そこで造られたモノの『鮮度』が重要であるというのは
そういうことです。したがって、世の中で言うところのトヨタ生産 方式の手法は確かに
大切ですが、新しいことを始めるときにはモノには順序があるように、トヨタ生産方式の
展開方法にも順序があるということが何よりも大切なことです。その展開の手順さえ
間違えなければ、食品業界の設備と製品が有する特性を考えた場合、他の生産手法に
比べてトヨタ生産方式が思わぬ優位性を発揮するはずです。
それでは、「トヨタの経営の仕組み(モノの造り方)」と「従来の会社の仕組み(モノの造り方)」
の違いとはなんでしょうか?この点については、いろいろな要素が絡み合っていますので、
一言で片付けてしまうのは難しいのですが、工場の機能という観点から 簡単に見ると
以下の点でしょうか。
○「従来の会社の仕組み(モノの造り方)」
生産の主体:生産管理による中央管理
経営の主体:本社等の間接部門
情報の伝達:コンピューター
○「トヨタの経営の仕組み(モノの造り方)」
生産の主体:現場作業者
経営の主体:工場
情報の伝達:モノ
以上については、説明していると長くなりますので、割愛させていただきます。
最後に、気になった点だけ書いておきます。
トヨタ生産方式を導入し工場の生産性が上がってくると、それまでがんばって働いて
いた人たちがリストラされてしまうのでは云々のお話が出ていましたが、真のトヨタ
生産方式の指導者であれば、そのようなリストラは絶対許しません。(派遣社員と
いうことになると、また状況は変わってきますが・・。)
リストラによる人件費削減の経営に対する効果は、その場しのぎのものであり本来の
意味で会社の体質が良くなったものではありません。トヨタ生産方式の導入により、
合理的なモノ造りが行えるようになって生産性が上がり、少ない人数で仕事が出来る
ようになったということは、余計な仕事をしないですむ人が増えたということであり、
そうした人たちが付加価値を取り込むことにより、人件費の数倍の仕事ができるように
なります。
その付加価値をどのように取り込むかというのが経営陣(間接部門)の仕事であって、
今まで損失を伴うようなモノ造りの方法を放置してきた結果として、人を採り過ぎたと
いう過去の経営に対する過ちを、現場で働いている人たちに押し付けるという経営は
間違っています。
ただし、本当のトヨタ生産方式を導入した場合の効果は、マスコミで報道されている
ような、2〜3割とか何割といった成果ではなく、数倍の効果が上がるものですから
(少なくとも私は、そういう事例しか見ていませんので)、リストラの心配などしなくとも
すむのですが・・。
以上、この内容でよかったのかな?という気がしないでもありませんが、私の知る限り
の範囲にてトヨタ生産方式について簡単に書かせていただきました。
私のお話が皆さんの工場管理を、耕し続けるヒントになれば幸いです。
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