==================================食品安全教育研究所発行=

■■  食品偽装の予備軍
■■■                  2014年6月1日発行 
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おはようございます。河岸です。
 今日から6月になります。最近月日が経つのが早く感じてしまいます。
 毎日、毎日を大切に過ごさなきゃならないと感じています。
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 食品偽装の予備軍
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違法ではないけれど

 スーパーで豚のひき肉の肉はどんな肉を原料に使用し
ているか聞いてみてください。ひき肉の表示は「国産」
表示になっているので、ロース肉、バラ肉と同じように、
普通の豚肉を使用していると思ってしまいます。
 しかし、ほとんどのスーパーの豚ひき肉は、親豚を
使用しています。親豚は大貫豚といわれ、普通の焼肉
で食べると、硬くて食べにくいのですが、ひき肉にす
るときれいな色になり、美味しそうに見えてしまいま
す。
 法律上は、「国産豚」で間違いないのですが、大貫
豚を使用したと表示が必要だと思いませんか。 
 大貫豚の挽肉は、味が濃く、悪く言えば獣の臭いが
します。挽肉を買った時に美味しく感じない場合は、
原料のせいかもしれません。
 長野県でお土産を買ったとします。お土産の表示に
は確かに、「販売者:○○食品株式会社R12
、住所:長野県長野市「○○町」と書いてあります。
 R12という記号は、「固有記号」と言って消費者庁
に届ければ、工場が埼玉県にあっても、
販売者:○○食品株式会社R12 と書いていいことに
なっています。
 大切な人に美味しそうなお菓子を買って帰ったら、
実はお土産に買って帰った方の家の直ぐ傍で製造して
いたりするのです。
 また、「もったいない」、「資源の有効利用」とい
う大義名分を持ち出して在庫品の再利用を正当化する
場合があります。
 雪印乳業の食中毒事件報道の中で、返品された牛乳
が再利用されていると報道されていました。
 返品されたもの、倉庫で賞味期限が過ぎたもの、製
造中にできてしまった不良品などを原料として再度使
用することが行われていました。
 
 

中間品ならいいのか

 箱詰めされていない、工場の管理下にある半製品
(製造途中の製品)なら、原料として再利用してもい
いのでしょうか。
 ハムソーセージ工場では、加熱後の製品としては使
用できない不良品を、原料として再度利用しています。
赤ウインナーソーセージを縦に半分にカットして断面
を見てみると赤い斑点を見つけることができます。
 赤い斑点が、ウインナーの再生品を使用している証
拠になります。赤ウインナーの不良品を再度チョッパ
ーして使用すると表面の赤い色が中に入ってしまうた
めに断面に赤い色が出てしまうのです。
 法律上、原料の表示上は、再生品を使用しても全く
問題はありません。しかし、一度加熱して、タンパク
質が熱凝固してしまったソーセージを再度配合しても、
結着することはなく商品はおいしくなくなってしまい
ます。
 昔ながらの豆腐屋さんでは、豆腐を作る過程で壊れ
てしまった豆腐を集めてがんもどきを作っています。
 私は、再生を全て否定しているわけではありません。
紙であれば再生紙を使用していますと表示してありま
す。
 ウインナーなども再生品を使用していると表示を行
えばまったく問題はないと思っています。いつの間に
か、不良品、返品を原料としてあたりまえに使用して
いることに問題があると思うのです。
 私がウインナーの製造管理を行っていた時に、大量
に不良品が発生してしまった事がありました。原料配
合時に、不良品のウインナーを細かく砕いて配合する
のですが、通常配合に2%の配合を行っても消化の見
込みが立たないときには5%と再生品の配合を増やし
て消化していました。
 再生品の入っていない商品と再生品2%配合の商品は
大きく味などに差はありませんでした。再生品2%配合
の商品と再生5%配合の商品は大きく味などに差はあり
ませんでした。しかし、再生品の入っていない商品と、
再生品5%配合の商品は全く食感が異なっていたのです。
 お客様の顔を見ないで配合を行っていたと今では反
省をしています。

 

組織の歪んだ倫理観を越えられるか

 人間は、ほんらい正直に生きるように出来ていますか
ら、「法律に触れなければ、偽装しても良い」ことには
ならないはずです。
 自分を評価する上司に「何処の法律にだめだと書いて
あるんだ!」と大きな声で言われてしまうと、つい偽装
を見ないふりをしてしまいます。
 企業に一般の社会から新入社員が入ってくると、一般
社会の常識と、業界の常識の違いで悩んでしまいます。
 会社の中では社是、方針の中で企業は毎日毎日、
「品質が一番」、「品質は企業の命」、「品質が誇り」
と謳っています。毎日の朝礼、集会の度に繰り返し全員
で唱和しています。
 一方で、8時から5時までの勤務時間の会社で、5時
を過ぎても席を立つ方は少なく、自然に6時を過ぎない
と残業は付かない、いくら残業をしても、月に20時間以
上はつけることができないといった会社、組織のルール
ができ上がってしまっています。

 「ある組織の倫理観は、組織の責任者の倫理観を越え
ることはない」という言葉があります。
 内部告発者を守る制度ということで、何かあったとき
に情報を入れてくださいと企業の中にホットラインを設
けている会社も増えてきました。
 私がかつて働いた会社も、社内にホットラインを設け
ていたのですが、実際に電話をしてみると、ホットライ
ンの対象となる、上司から、「私の耳にも入っているよ」
と睨まれ、それ以上の事が行動として起こせなくなった
事がありました。
 雪印食品の牛肉偽装事件も、普段は日の当たらない食
肉部門の数人の行動が結果として、会社を解散までに追
い込んでしまいました。
 牛肉偽装が倫理観にも劣ることを気が付いている従業
員でも「私の指示を聞かなければクビだ」と上司に言わ
れてしまえば、明日からの生活を考え、不当な指示にし
たがってしまいます。
 社内告発を行っても働きづらくなってしまいます。行
政に告発を行ってしまえば、結果として企業は継続しな
くなってしまいます。日本の組織の中で内部告発者が、
告発前と同じように働けるにはまだまだ時間が必要だと
思います。
 できれば、第三者の民間団体に匿名で告発でき、告発
されたことを責任もって解決できるような組織が必要だ
と思っています。
 私が運営しているホームページ「食品工場の工場長の
仕事とは」にも毎月のように内部告発のメールが飛び込
んできます。
 自分の倫理観に合わないことを上司に要求された方は、
声を上げるときがきていると思いませんか。
 「なぜ、産地偽装を行ってはいけないのか」、「なぜ、
食品期限の書き換えを行ってはいけないのか」、「なぜ、
再品を使用してはいけないのか」
 産地偽装を行ってならない理由は、もし中国製冷凍餃
子事件のように、市場回収が必要になったときに、対象
商品の区分が不明になり、回収品と異なり安全だと思っ
て食べてしまい被害が拡大してしまうからです。
 一人でも自分の倫理感のとおり行動する方が増え、全
ての食品について、いつ、だれが作ったかが明確になり、
安心して食事ができる時代が来ることを祈ります。

 なぜ、いつまでたっても産地偽装はなくならないのでしょうか。

 
私のお話が皆さんの工場管理を、耕し続けるヒントになれば幸いです。

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