==================================食品安全教育研究所発行=

■■  物語を持った美味しい商品
■■■                  2014年1月25日発行 
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おはようございます。河岸です。
 今日は春並みの暖かさになりそうです。
 ノロウイルスが勢いを増していますが、みなさん対策は出来ています
か。作業着の洗濯は、工場で管理するのが対策の基本中の基本です。
 従業員の家庭で洗濯している事を改善しませんか。
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物語を持った美味しい商品
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 私がメーカーの開発担当としてコンビニの商談を担当
していたときの実際のお話です。
 新商品の鶏のから揚げを提案するときにバイヤーから
言われました「から揚げを口に入れた時に「このから揚
げおいしいね」と声を上げるようなから揚げがほしいの
です」。
 商品を提案するときに大切なことは「食べたときに美
味しい」という基本の基本が大切なのです。食べる前に
知識として「地鶏を使ってます」「鶏肉に日本酒で下味
を漬けてます」と言ったことを聞く前に口に含んだとき
の第一印象が大切なのです。
 「どうしたこの鳥のから揚げはおいしいのですか」と
聞かれたときに初めて、こだわったところの説明をする
のです。
 私はコンビニの惣菜工場で実務として開発を担当して
いた事があります。
 開発を担当した初めのころは、「コンビニの惣菜なん
て、どうせ冷凍原料を揚げるだけだろう」と思っていま
した。
 そんな考えの私が、始めて、鶏の唐揚げを持ってコン
ビニ本部に初めて商談に行った時の事です。
 担当していたバイヤーの方は、なにも言わなかったの
ですが、コンビニの商品担当の責任者の方が、「こんな
もの食べられないよね」と一言もらしたのです。
 私は心の中では、「どうせコンビニの惣菜だろ」と思
っていました。
 しかし、商品担当の責任者の方は、「君は肉のプロじ
ゃないのか」と声を掛けてくれたのです。
 当時私は、自称肉のプロと自慢していました。
 「よし、世の中で一番美味しいサンプルを商談に持っ
てくる」と思ったのです。
 後日、解ったのですが、他のメーカーの方は、商談日
当日にサンプルを製造し、自然冷却で商談サンプルを製
造していたのです。
 しかし、私は、お客さんが食べるタイミングと同じ様
に、商談の前日に製造し、真空冷却機(細菌が増殖しな
いように、一気に唐揚げの温度を下げる機械)を使用し
商談サンプルを製造していたのです。
 もちろん製造してから時間が経てば唐揚げは硬くなっ
てしまいます、真空冷却機を使えば唐揚げの水分は飛ん
でしまいます。
 私も他のメーカーと同じ様に商談日当日に商談サンプ
ルを製造すればよかったのかもしれません。しかし、登
録はうまく行ってもお客様は商談サンプルと違う物を食
べる事になります。
 当時のコンビニの商談はサンプルが良くなければ登録
する事が出来ませんでした。
 極端な話では、登録時だけ美味しいものを作って登録
してしまえば済む話でした。しかし、私はお客様が食べ
るタイミングにこだわったのです。
 「たかがコンビニの商品」と言う考えを捨て本当に美
味しいものを作ろうと思ったのです。
 鶏唐揚げを一口食べただけで唸る物を作り上げる事を
目指したのです。
 しかも、真空冷却機を通して美味しものを作りたかっ
たのです。
 

細部にこだわる

 鶏のこだわりは原料から始めました。
 手に入るだけの鶏肉を手配しました。
 国産、ブラジル、アメリカ、中国、凍結、チルド、本
当に多くの原料を手配しました。
 様々な鶏肉を同じ様に唐揚げにして食べて見たのです。
 明らかに原料肉によって味が異なりました。
 その中でも国産のチルドの鶏肉が一番柔らかく美味し
く感じたのです。
 国産のチルドの原料を使用し、工場内で唐揚げ用の大
きさに手切りすることにしたのです。
 他のメーカーは、唐揚げ用にカット済みの原料を使用
するのが一般的でした。
 鶏肉を手切りすることは、現場からは総反対を受けた
物です。しかし、現場の方も手切りの鶏肉を使用した唐
揚げを食べてしまうと美味しさの違いに驚いてしまいま
した。
 鶏肉はカットした断面から赤い肉汁が出てしまいます。
この肉汁が肉の美味しさにつながるのです。
 鶏肉のカット方法は、私が直接従業員に教育しました。
 もちろん骨が残っている所、取らなければならない筋
のある所を細かく教育したのです。
 真空冷却機を使用しても美味しものを作るのは一工夫
が必要でした。
 真空冷却機は、製品中の水分を飛ばして製品の温度を
下げる機械です。
 真空冷却機を使用するとどうしても唐揚げがばさばさ
してしまいます。
 私は、当時ハムのレシピー(配合)を組んでいました
ので、ハムと同じ様にリン酸塩を使用して、鶏肉に水分
をあらかじめ含ませたのです。
 食品添加物を嫌う方がいることは否定しません。しか
し、食品は食べたときに安全で、美味しい事が最低の条
件だと思っています。
 安全な唐揚げの為には、真空冷却機は外せません。
 しかし、真空冷却機を使用するとバサバサしてしまい
ます。
 バサバサ感はリン酸塩を使用する事で改善することが
出来るのです。
 安全で美味しくする為の食品添加物を必要最低限使用
する事は必要な事だと思っています。
 ここまでくれば、あとは味付けです。生のにんにくを
使い、醤油を使い味を纏めました。
 唐揚げにはレモンが何故か合うものです。
 レモンのくし切りを付ける事にしました。
 レモンのくし切りを見れば調理人の気の使い方がわか
ると私は思っています。
 くし切りは単純にレモンを半分に切って更に三等分す
ればいいものです。
 しかし、ただ切っただけでは、レモンを絞った時にレ
モン汁がきれいに絞れ無いのです。
 三角の頂点の所を切る事が大切なのです。有名なレス
トランでもレモンの切り方が悪いとがっかりしてしまい
ます。
 更に、レモンを絞りやすくするために両端を切り落と
すことが大事なのです。
 ただし、単純に切り落とすのでは無く、手が汚れ無い
様に白い所を残して切り落とすことがポイントです。
 商品作りに本当に細かく気を使いました。

 

爆発的に売れました

 コンビニ惣菜は多くても一日四個程度売れればヒット
商品でした。
 こだわりにこだわった鶏唐揚げは、週末、連休前には
一日二十個は売れたのです。
 鶏肉のカットが間に合わず、私は休日でも鶏肉をカッ
トしてから遊びに行く日があったものです。
 従業員の方からも家で作るよりも美味しいからと言っ
てコンビニのお店で買う方がいました。
 家族パーティをするので纏めて売ってくれないか等と
言った声も有りました。
 お客さんが食べる時点で美味しいものを作れば自然に
売れる事を学んだ事例です。
 何故鶏唐揚げが美味しいのですか と聞かれると、新
鮮な鶏肉を使用していますからと鶏から揚げ物語を話し
たものです。
 しかも、原材料原価で言えば、事前にから揚げに加工
された冷凍食品を買うよりも安かったのです。
 鶏肉をカットする人件費、カットする事を苦痛と思う
かどうかで、美味しくて安価なものを作り上げることが
できるのです。
 
私のお話が皆さんの工場管理を、耕し続けるヒントになれば幸いです。

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