========================================食品工場長の仕事とは===

先日の読者の方から丁寧な返事を頂きました。

http://homepage3.nifty.com/ja8mrx/ikenn8.htm

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工場長　様

早速のご返事ありがとうございます。

ムカデ競争の例えが非常に分かりやすく、品管の立場というものがよく分かりまし

た。

いい現場との関係を築くためにも「サポートするぞ」と肝に銘じて日々精進していき

たいと思います。

品質管理という仕事についている以上、いい品質をお客様に提供したいという気持ち

が先走っていたかもしれません。その前に、作るのは生産課の人たちであり、いい物

を作ってもらうためには、協力していかなければならないと思いました。

あともう1つ質問です。

品管にはAQLなどの規格があり、抜き取り（検査）数も生産量に比べたらわずかで

す。やはり現場での品質管理強化が重要になってきます。どうしたら生産課の人たち

に品質に関して興味をもって、危機感をもっていただけるのでしょうか？

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非常に鋭い質問だと思います。全数検査すると無くなってしまう物があります。

拳銃の弾が本当に発射出来るか全数検査で確認する。電球の強度が本当にあるか

どうか実際に破壊検査を行ってみる。食品が細菌に汚染されていないか全て細菌検査を

行う。このどの例でも実際に行ってしまうと販売する商品が無くなってしまいます。

　初めに上げました例の拳銃の弾の考え方から、全ての製品を検査してしまっては

販売して使用する最終商品が無くなってしまいます。そこで有る程度の抜き取り検査を

して、その検査結果が有る程度の不良率以下であれば、ロットを合格とします。

　しかし、１００００発に一個不良品があっても合格とします。しかしその一発が自分を

守る最後の一発と考えたときは、目の前に現れた敵を殺さないと自分が殺されてしまう

場面の最後の一発が、不良品の弾に当たった場合は不良率で基準に達しているので

合格にしましたと言われても困ってしまいます。

　食品の細菌検査の場合でも同じです。全てを細菌検査に回すわけには行きません。

全てのスライスハムのパックを検査に回してしまっては販売する事は出来なくなって

しまいます。最終検査が破壊検査では無く、有る検査を行って出荷出来る場合は別

ですが、衛生の細菌検査を行ってしまうと、破壊検査になってしまいます。製造現場は

慣れてくると、そろそろ拭き取り検査に来る時間だと思うと、アルコールを噴霧して

綺麗に作業台を拭き始めます。抜き取り検査の時間だと思うとリジェクト品を流す事を

止めてしまいます。そうすると、重量不足ではねた商品は実際は細菌検査に係る事

無く本当の問題点を見ることが出来なくなってしまいます。

　その重量不足の商品は、再度一枚ハムを加えられて、商品として流されます。その

商品があなたの母親が購入されたとします。当然あなたが働いている職場の商品

ですから、安心して購入されます。そうして軽量ではじかれてからしばらく室温放置

されたため、細菌数が増えてしまい、あなたの母親は体調を悪くしてそして亡くなって

しまいます。そう考えると、品質管理が検査に来たときにだけアルコールを大量に

噴霧して拭き掃除をしても、あなたの一番大切な人の命を守ることは出来ないことに

気が付くと思います。

　人の命を直す医者の仕事に就くためには、一生懸命勉強して医大に入学して、

６年間勉強して国家試験を受けて、そして何年も修行しないと医者にはなれません。

しかし、食品事故で人の命を奪う事は簡単にできてしまいます。そしてその作業に

着くには何の資格もいらないのです。しかし、食品に関する品質管理の基礎を学んで

検査されない全ての商品を自信をもって出荷出来るようにする努めがあるのです。

そして、質問をして頂いた読者の方を初め、品質管理の方は、共に働く人に対して

教育する使命があるのです。

いま目の前を流れている商品は、あなたの一番大切な人が食べるのです。

そう教育する事をお勧めします。

私のお話が皆さんの工場管理を、耕し続けるヒントになれば幸いです。