========================================食品工場長の仕事とは===
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■■ 2007年を振り返って
■■■ 2007年12月30日発行
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おはようございます。河岸です。今年もあと二日です。正月休みは、箱根駅伝
もいいですが、本を読むのもいいですよ。
今週のお薦めの本です。
わたしたち消費―カーニヴァル化する社会の巨大ビジネス (幻冬舎新書)
鈴木 謙介 (著), 電通消費者研究センター (著)
知らないところで流行は起きています
年末のNHK紅白歌合戦の出場歌手の一覧表を見ても知らない歌手、知らな
い歌が増えてきました。一世代前は、だれでも口ずさめる歌がほとんどだった
のに、だれも知らないような歌手が紅白に出る時代になりました。
CD,本が100万部売れるとミリオンセラーと言って大騒ぎされますが、ニンテ
ンドーDSのゲームソフトは売れているものでは500万本を超えているようです。
しかし、ゲームソフトの名前をおじさん達は知らないのです。
マーケッティングもどうしたらこのマスをとらえることができるのか、何を考え
て行動していけばいいかが判る一冊です。
http://astore.amazon.co.jp/koujyou-22/detail/4344980611/250-4889569-1797033
偽装国家―日本を覆う利権談合共産主義 (扶桑社新書 3) (新書)
勝谷 誠彦 (著)
匿名社会を止めることです
インターネットは匿名社会です。アマゾンのカスタマーレビューも皆さん匿名
です。私は本も出している関係から本名で書いていますが、本名なりの責任
が出てきています。実際に本を読んで、レビューを書いてもいい本だけを書い
ています。
本名でバイネームで自分自身に責任を持って行動する社会が必要だと思い
ます。組織の責任者は特に、「ノブレス・オブリージュ」で責任を持って行動
することが必要です。日本は責任者が「良きにはからえ」と言って普段は放置
し、何かあると「パートの性です。」では、エリートとは言えません。
自分の名前で責任を持って行動すれば、偽装は無くなるとおもいませんか。
そんな事を考えさせてくれる一冊です。
http://astore.amazon.co.jp/koujyou-22/detail/4594053084/250-4889569-1797033
悪魔の呪文「誠意を示せ!」―悪質クレーマー撃退の50ポイント (〈シリーズ〉
“負けない企業人”になるための本) (単行本) 深澤 直之 (著)
弁護士に任せるタイミングが大切です。
クレーム処理の方法は数多くの本が出ていますが、弁護士に任せるタイミン
グと、実際の文例が付いているものは珍しいものです。
巻末の守り札である弁護士からの文章の例は非常に参考になります。
自分の家族にえーー会社でそんなことしていたの情けないなーと言われな
いように一読をお薦めします。
http://astore.amazon.co.jp/koujyou-22/detail/480903125X/250-4889569-1797033
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2007年を振り返って
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「偽」の年です。
漢検が毎年公募している「今年の漢字」は「偽」になりました。「偽」が18%
あまりを占めて1位。2位は「食」3位は「嘘」だそうです。
食品業界を振り返っても、
1月 不二家
6月 ミートホープ
8月 石屋製菓
10月 赤福
比内鶏
船場吉兆 と大きな「偽」と表せる物を上げても非常に多くなっています。
倫理観を持って本当に行動していますか。
クリスマスケーキは10月頃より製造して凍結してクリスマス直前に解凍して出
荷しています。おせち料理も10月頃より製造して「凍眠」させて元日に食べられ
るように出荷しています。
実際の例もありました。私は昨年まで、12月になるとおせち売り場の売り場造
りを手伝っていました。おせち料理は特にかまぼこがないと始まりません。おせ
ち売り場コーナーにかまぼこを並べていると、なんとかまぼこは凍ったままなの
です。スーパーに運ばれてくるときに製造メーカーの凍結庫から出庫されてすぐ
運ばれてきますので、かまぼこはまだ凍ったまま運ばれてきます。
かまぼこは年末に多く売れるために、賞味期限を翌年の1月4日以降の日付を
印字して段ボール詰めされ凍結庫で凍結されます。もちろん賞味期限の印字は
打ってあって凍結庫で保管して、12月26日の朝に解凍しながらスーパーなどの
店頭に並ぶのです。
一度凍結されたかまぼこは、スポンジのようにすかすかしてかまぼこが本来持
っている歯ごたえを楽しむことはできません。年末のかまぼこは、通常400円程
度のかまぼこが半額の2000円くらいになります。もちろん使用しているすり身な
どの種類も違うのでしょうが、年に一回美味しい物を食べたい正月に、一度凍結し
た商品を解凍して出荷しているというのは正直疑問が残ります。工場の生産性を
上げるとこのような発想になるのでしょうが、正月の年の初めに食べるかまぼこは、
本当に美味しいものを食べたいものです。かまぼこを造る職人の方がお客様に美
味しい物を食べてもらいたいと思ってかまぼこを造れば、答えは変って来ると思い
ます。
かまぼこメーカーに勤めている人も、正月のかまぼこは買わないと私は思います。
工場の目的は売上、利益です。
食品工場の目的は図のように表すことができます。工場は毎日生産活動を行っ
ていますが、その最終目的は売上になります。そして売上の結果の利益になりま
す。利益を上げるためには生産性を上げること、製造歩留、原材料の有効利用は
当然のことと言えます。しかし、その土台は品質・安全性で出来ているのです。法
律的には食品衛生法、JAS法などの関連法規を守ることが大切になります。注文
が増えたと言って指定された原料の手配が出来ないままに生産を行うと品質の土
台より生産活動が大きくなってしまい、世間からの評価で簡単に工場は倒れてしま
います。しかし、安全性が大切と言って土台を大きく、鉄筋コンクリートで造るように
毎日毎日製造した全ての商品を検査してしまっては販売する物がなくなってしまい
ます。工場でクレームを出さない一番いい方法は製品を出荷しないことです。品質
管理の目標をクレーム「0」に置くと製品を出荷しないことが一番いい評価に繋がっ
てしまいます。
倫理観の土台が更に必要です。
この品質・安全性の土台はさらに倫理観(エッシクス;ethics)の土台に支えられ
ています。このコンプライアンス(compliance)(法律)より優先される倫理観を企業が
持つことが非常に大切です。日本の食品衛生法、JAS法について言えば、不十分
な法律であり、まだまだ法律だけでは縛りきれない問題が残っています。消費期限の
切れた原料を使用してもその事実だけでは法律違反にはならないのです。原料を加
工して販売するまでには、非常に多くの人手が関わっています。日頃から企業は倫
理観を全面に出して活動しなくてはいけません。その一つが社是であり、毎日の社是
等の唱和になります。社是の中には、必ず「お客さまのために」、「品質が第一」、
「品質は命」などと謳われています。毎日毎朝社是を唱和して倫理観を高めます。し
かし、組織の中で行動していると、社会の普遍的な倫理観が守られることは無く、
自分たちの都合のいい企業の中の倫理観だけになってしまいます。本来企業は、
法律よりも一段高い倫理観に基づいたルールを設定し、それを守るように勤めない
といけないのです。
利益を求めるために何か大切な物を忘れていないか再度考えてみてください。
私のお話が皆さんの工場管理を、耕し続けるヒントになれば幸いです。