========================================食品工場長の仕事とは===
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第31回「返品の使用について」■■■ 2008年8月3日発行
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おはようございます。河岸です。
今年は暑い7月でした。関東は8月も暑いみたいです。水分をたくさん取って
トイレに行く回数を増やすように努めないと脱水してしまいそうです。
皆さん夏ばてはしていませんか。
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8月の講演の詳細が決まりましたので、お知らせします。私の紹介と申し込
み用紙に書いていただければ、値引きがありますので、是非申し込んでください。
定価より15,750円割引になります。
「食品原料仕入れ時の仕入れ先の実践的点検と監査ノウハウ」
申込時に、「こんな食材の点検方法を知りたい。」、「こんな偽装を見抜きた
い。」と要望があれば、書いていただければ、要望に応じたいと思っています。
メルマガに書けない、本に書けない、点検の秘策を説明したいと思っています。
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今週のお勧めの本です。
名ばかり管理職 (生活人新書 (260)) NHK「名ばかり管理職」取材班 (著)
どんどん辞めていく会社は。。。
社員、管理職という名ばかりの管理職が増えて、残業も付かない状況で朝
早くから、真夜中まで働いている方は多いと思います。
「おまえは管理職なんだから」、「残業は付く分けないだろう」と多くの会社の
中で話されていることと思います。
コンプライアンスが叫ばれ、表示、産地偽装などにコンプライアンスが求めら
れていますが、残業、勤務評価も含めて、最低の法律遵守を大きな声で叫ぶ
時が来ているのかもしれません。
どういう人が管理職か、管理職の人は本当に管理職の仕事をしているか
考えて見るのに適切な一冊です。
http://astore.amazon.co.jp/koujyou-22/detail/4140882603/503-6974328-7135903
裏のハローワーク (単行本) 草下 シンヤ (著)
いろんな仕事があります。
「金を返せないのならマグロ漁船に乗るか」なんて借金取りに言われそうで
すが、本当にマグロ漁船に乗る事が出来るかどうか調べてみたいと思いませ
んか。
裏の仕事と言われる様々な仕事を紹介しています。
事実と若干異なる表現も有りますが、仕事の中身を知るにはいいかもしれ
ません。
夜逃げや、偽造クリエーター。大麻栽培、飛田新地で働く、本当に様々な
仕事を紹介しています。
世の中を知るには一度読んで見てください。
http://astore.amazon.co.jp/koujyou-22/detail/4883924335/503-6974328-7135903
私が書いた本です。
「図解入門ビジネス 最新食品工場の衛生と危機管理がよ〜くわかる本」
著者 河岸宏和 価格 1575円(税込)(本体1500円)
ISBN 978-4-7980-2007-5
25年の経験を本にしました。
食品工場の衛生管理、品質管理のほか災害発生時の危機管理まで、安全
安心な食品を安定して供給できる食品工場の運営管理のノウハウを実践的に
解説しました。
不二家事件、ミートホープ事件、毒餃子事件と食にまつわる事件が立て続け
に発生し、食品メーカーにとって食の安全と品質確保は緊急の課題となってい
る一方、災害や停電の発生、資材不足などで生産停止に追い込まれるメーカー
も少なくありません。
本書は、食品工場で25年の経験を持つ私の経験をもとに、食の安全安定
確保の具体的な施策のほか、クレーム対応や社員教育まで、実務で使える
ノウハウが満載に詰まっています。
http://astore.amazon.co.jp/koujyou-22/detail/4798020079/503-6974328-7135903
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第31回「返品の使用について」
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考え方を切り替える必要があります。
2008年6月に奈良県の三輪そうめんが賞味期限を書き換えて再出荷されてい
たと報道されました。
再出荷の際には、再出荷品が再び返品されて、再々出荷となることを避ける
ために再出荷品には箱詰めした日付の横に「:」の記号をつけていました。社内
では、「テンテン商品」と呼んでいたそうです。
本来賞味期限が3年半ある商品なので、返品を巻き替えても問題ないと責任
者は認識していたそうです。
船場吉兆では、客が残した料理をいったん回収し、別の客に提供していたこと
が関係者の証言で明らかになりました。使いまわししていた料理はアユの塩焼
きなど多数に渡ったそうです。
レストランなどでバイトしている人たちの間では食べ残したパセリなどの再利用
は都市伝説の用に言われています。
スーパーでも、刺身の期限切れの売れ残りを、店内調理の寿司に再利用して
いたという報道もありました。
雪印乳業でも2000年の食中毒報道の中で、スーパーなどから返品された牛乳
を再度コーヒー牛乳などの原料に使用していたことが、明らかになりました。
私が、講演などでよく使う言葉に「組織の倫理観は、組織の責任者の倫理観を
超えることは無い。」があります。
組織の責任者が、一度市場に出荷した商品が販売されずに賞味期限が切れて
しまい、工場に返品されてきた商品の日付を再度付け替える事を、従業員に指示
してしまうと、一般の従業員は断ることはできません。
一般常識、一般の倫理感では賞味期限を付け替える事はおかしいのですが、組
織の責任者に言われてしまうと、自分の生活を考えてしまい、断ることはできなくな
ってしまいます。
一度自社の管理下を離れた返品の賞味期限を書き換える事はできないと、責任
者の考え方を切り替える必要があるのです。
出荷していない商品なら再利用できるか
自社の管理下を離れていない商品の在庫が溜まった時に、再度日付を書き換え
て使用する事を考えてみます。(図1参照)
あなたの工場の出荷していない商品在庫が溜まってしまいました。このままでは
食品期限が来る前に売り切ることはできません。本来は3年持つ商品なので、現状
は食品期限が一年しかつけてないので、再度日付を打ち直しても問題は無いので
しょうか。
食品期限(賞味期限、消費期限)は企業で自由に設定できますので、科学的根拠
さえあれば法律上問題は無いと思います。
しかし、本当に、一度印字した商品を再度印字しても問題は無いのでしょうか。
食品期限の残っている商品を再度原料として再利用する場合はどうでしょうか。
2002年に大手コーヒーメーカーで製品になったインスタントコーヒーを再度原料とし
て使用していることが報道されました。
AGFは、ホームページの中で「製品再生」(リワーク)は2000年一月より使用してい
ない宣言しています。
在庫品を再利用するときに、「もったいない」、「資源の有効利用」という大義名分
を持ち出して正当化する場合があります。
製品になっていない中間品ならいいのか
箱詰めされていない。工場の管理下にある半製品なら、原料として再利用しても
いいのでしょうか。
ハムソーセージ工場では、加熱後の製品としては使用できない不良品を、原料と
して再度利用しています。赤ウインナーソーセージを縦に半分にカットして断面を見
てみると赤い斑点を見つけることができます。(図2参照)
この斑点が、ウインナーの再生品を使用している証拠になります。赤ウインナーの
不良品を再度チョッパーして使用すると表面の赤い色が中に入ってしまうために断面
に赤い色が出てしまうのです。
法律上、原料の表示上は、再生品を使用しても全く問題はありません。
しかし、一度加熱して、タンパク質が熱凝固してしまったソーセージを再度配合して
も、結着することはなく商品はおいしくなくなってしまいます。
再生品を使用することは、お客様のためにはなっていないとおもいませんか。
何度でも使える原料なら使用してもいいのか
チョコレートの用に何度使用しても物性などが変化しないものは再生を使用しても
いいのでしょうか。
鉛筆の形をしたチョコレートなどは見るからに包装工程で折れてしまいそうです。包
装工程で折れてしまったチョコレートを何度でも溶かして原料として使用してもいいの
でしょうか。
何も問題が無いときは、物性、細菌的に問題は無いと思います。
但し、図3の様に、再生を使用した商品がまた再生になってしまい、延々と再生の
サイクルが回ってしまうことになります。
もし、どこかで配合ミスが発生し、異物が混入してしまうと、異物混入したロット以降
のロットがすべて不良品になってしまいます。
市場で異物が発見されたとします。異物は金属のバリで多数混入したとします。
バリの原因は工場内で発見され対策は取られたとします。
しかし、当日の再生品が翌日も使われてしまいました。結果として、翌日の商品も市
場回収しなくてはならなくなりました。
ロット区分を明確にすることは、市場回収(リコール)をするときに大切な項目になりま
す。
ロット区分明確にするために、再生品を使うときには注意が必要です。
何が理想なのか
テニスボール、ゴルフボールなどは練習用として、ロストボールが販売されています。
店頭ではじめから「一度使用したボールですよ。」と表示して販売しています。
2008年に年賀状に使用していた再生紙が本当は使用していなかったと報道されまし
た。
再生紙をきちんと使用するより、新品のパルプを使用した方がコストが安いという変
な図式も明らかになりました。
もっと不思議だったのは、郵便はがきは表示通りに再生紙を使用すると、はがきとし
て使用できないと言う点です。
インスタントコーヒーの再生利用にしても、再生紙の用に、「再生コーヒー10%使用」
と表示に書いてあれば私は全く問題は無いと思います。
ソーセージにしても、「原料の内再生品を5%使用」と表示してあれば問題は無いと
思います。
しかし、赤福の返品使用のむきあん、むき餅にしても使用していた目的が、捨てるは
ず製品を商品の原料と使用することで利益を生むために使用していたと思われます。
不良品、返品を再生品として使用しなければ、廃棄するために新たなコストが発生し
てしまいます。
再生を原料として使用すれば、廃棄コストも無くなり、新たな原料も購入することなく
生産を続けることができます。
ソーセージなどの不良品は、不良品として規格をつくり、業務用に販売すべきだとおも
いませんか。包装中に折れてしまったソーセージは、細かく切れば業務用として使用でき
ると思います。
再生として使用できると思えばこういったアイデアは出ませんが、「一度加熱してしまっ
た商品は再利用ができない。」とすれば様々な販売方法が浮かんでくると思います。
食品の廃棄は避けるべきです。
図4の様に日経ビジネス2008年6月16日号の記事によると、家庭のゴミを実際に細か
く分類してみるとなんとゴミの42%は、本来食べることのできる食品を捨てているそうです。
家庭ゴミの他にレストランの食べ残し、コンビニなどの賞味期限切れ食材などとあわせる
と、日本の食料自給率が40%を切る中で、なんと食品全体の35%以上が捨てられてい
るのです。
ざっくりの数字で纏めれば、日本国内で生産している食料品と同じ量が、一度も食べら
れることなく捨てられていることになります。
「もったいない」という大義名分で再生を使用している企業も多いと思います。三輪そう
めんの再利用、船場吉兆の再利用も「もったいない」という大義名分があったのかもしれ
ません。
「温暖化から地球環境を守る」という大義名分もあると思います。
では、不良品、売れ残り品などから発生する再生品を原料として使用しなかった食品は
どうしたらいいのでしょうか。
スーパーなどの販売期限は過ぎているが、「食品期限の残っている商品」、「包装不良
などで正規ルートでは販売できない商品」、「あり得ない年号をつけてしまった日付ミスの
商品」、などは廃棄するしか無いのでしょうか。
新聞の三面記事の下には、日付ミスの社告が毎日のように載っています。
2008年と表示すべきところを、2007年と表示してしまって回収している場合もあります。
該当する商品は明らかな訳ですから、社告、報道などで「この商品は日付は間違えてい
ますが、中身にはもんだいありません。」と言って販売を続けることはできないのでしょう
か。
NPO法人で、セカンドハーベストという法人があります。工場で発生した、包装不良品、
市場で賞味期限の迫っている食品などを、必要な人たちに供給しているNPO法人です。
食料は、廃棄するために製造しているわけではありませんから、こういったNPO法人
を利用して有効活用を図るべきだとおもいませんか。
食品は食べられるために作られたのだと思います。最後まで残さずに食べられる事
を真剣に考えるべきだとおもいませんか。
私のお話が皆さんの工場管理を、耕し続けるヒントになれば幸いです。