========================================食品工場長の仕事とは===

   ハードル理論について 


「目標の設定と評価について」の内容で読者の方からメールを頂きました。

http://homepage3.nifty.com/ja8mrx/mokuhyou13.htm

 

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クレームをゼロにする方法について

今HPを拝見しておりました。

掲題の件ですが、商品を造らなければクレームは発生しませんが、

今まで通りに製造しながらクレームをゼロにする事は不可能に近いと思います。

ここ2年間でようやくクレーム発生率が年間1ppm以下に近づいてきたところです。

クレームゼロは私にとって究極の課題です、ぜひ教えてください。

よろしくお願いします

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読者の方は答えをすでに見つけてしまっています。ごまかしの様ですが、製品を

工場から出荷しなければクレームは発生しません。このクレームをゼロにする目標を

品質管理担当者が掲げ、製品を出荷せずに目標値をクリアした場合に結果として

その品質管理担当者を賞賛出来るかどうかと言うことです。しかし、読者の方の

様に真剣にクレームを減らそうと考えている方もいらっしゃいます。その時に有効な

考え方は、今からお話しするハードル理論が非常に有効な考え方になります。

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「お宅の工場は納入するときハードルが高いから」

「いやいや納品のハードルが高くてなかなかうまくいきません」

「従業員採用のハードルが高くて私なんか入社できません」

このようにハードルという言葉を、私たちはよく使います。

 hurdle、ハードルは、陸上競技のハードル競技を、思い浮かべてもらえれば、

いいのですが、陸上競技場のトラックでハードルが並んでいます。そのハードルの

高さを調整すれば、ゴールまでの時間、完走する人の数を調整することができます。

もっとも、陸上のハードル競技は、ハードルを倒してもいいので、このハードルが

倒れないものでできている、コンクリートとか、丸太とかでできていると考えて見て

ください。例えば、高さ30cmのハードルを、400mのトラックに並べても完走する

選手は多いと思います。かかる時間も、ハードルの無い場合に比べても非常にいい

と思われます。そのハードルを200cmに上げたハードルを100mに並べたとしたら

何人ゴールできるでしょうか。また条件も必ず飛ばなくてはいけません。バーを落と

してはいけません。ハードルの材質を丸太にしたらどうでしょうか。

その、ハードルの高さ、ハードルの材質が、あなたの工場の管理レベルになるのです。

 

 

走る人を細菌と考えます。

 ゴールは細菌が最後まで行ってしまう事。すなわち腐敗ということです。ハードルの材質

すなわち種類と高さを変えることで、あなたの工場の管理状態が簡単に変化してしまう。

それがハードル理論です。

 

この理論でハードルの数を増やし、材質を変化させて、高さを高くすることによって、食品の

安全性を高める事ができます。

 

ハードルの種類としては、次のような事が考えられます。

従業員の衛生レベル

工場の設備レベル

従業員の教育レベル

作業室の室温、湿度

落下細菌のレベル

原料の衛生状態

 

製品自体の設計としては 

殺菌加熱温度

製品保管温度

ph

Aw(水分活性)

包装状態 

添加物

 

 この考えられる、ハードルの種類と高さを多くして、細菌がゴールに行けないように、

設計部門で設計して、製造部門でその高さを常に設計どおりの高さになっているか、

監視していくことが重要になります。図のようにクレーム(細菌)の力が10あったと

する、一つのハードルを飛ぶ力が2いるとします。そうすると。5本以上のハードルを

建てるとクレームは発生しないことになります。但し、クレームはいくつかの要因が

重なった時に発生します。このことは、一つのハードルだけでクレームを防ぐのは

非常に難しくて、2の力で飛ぶハードルをいかに、数多く建てることが出来るかが

ポイントになります。図のように8本のハードルを建てることができれば、2、3本の

ハードルが倒れてもクレームは発生しないことになります。

 このハードルの種類が、HACCPで言うところのCCPになり、そのハードルの高さと

種類が、CCPの管理基準、管理項目になります。

製造工程でCCPの管理項目が、常に監視して記録していくのが帳票になります。

 

同じように物理的危害、化学的危害についてもハードル理論で工場の

ハードルを高くする事を考えることができます。

例えば金属異物混入のためのハードルの一つである、金属探知器で考えてみます。

この金属探知器が故障していた場合は、ハードルが一つ壊れていたことになると

思います。金属探知器の代わりに、もっと精度の高いエックス線探知機を備えて

いればいいのですが、最終の関門がないままで製品を出荷しては、大きな意味で

契約違反になります。つい、ハードルの一つを無くしてでも、お客様との約束を

守る意味で製品を出荷してしまいます。その結果が牛肉の偽装だったり、鶏肉の

偽装に繋がってしまいます。ハードルを決めるときに議論を尽くせば、安易に

ハードルの高さを変えたりはできないと思います。

 

ハードルの高さを変えている人がいればホイッスルを吹くのはあなたです。

http://homepage3.nifty.com/ja8mrx/foisuru5.htm

 

ハードルの高さを決めて、そのハードルがきちんと機能しているかを毎日確認する。

この地道なことがクレームをゼロにする一番の近道になります。

 

 

私のお話が皆さんの工場管理を、耕し続けるヒントになれば幸いです。

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表紙イメージ 河岸宏和への質問



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